平成26年度補正予算案件「サヘル地方及びマリとの国境地域における,保健・栄養,水・衛生,教育,子どもの保護への統合的援助を通じた家族,コミュニティー,組織の緊急準備対応力,強靱性の強化(UNICEF経由)」式典
2015年10月29日,サヘル地方ドリ市(ワガドゥグから北東270キロに位置)の教員養成校(ENEP)にて,平成26年度補正予算案件「サヘル地方及びマリとの国境地域における,保健・栄養,水・衛生,教育,子どもの保護への統合的援助を通じた家族,コミュニティー,組織の緊急準備対応力,強靱性の強化(UNICEF経由)」における教員研修第二セッション開始式典が行われ,ブルキナファソ政府を代表して,サマドゥ・クリバリ国民教育・識字大臣及びジブリル・ラレ・サヘル地方知事が,UNICEFからはルバン・ブルキナファソ事務所長等が,日本政府を代表して二石大使が参加しました。
なお,今回行われた教員研修は,UNICEFが推進している「子供に優しい良質の学校(EQAME)」の活動のひとつであり,日本が実施している技術協力プロジェクト「学校運営委員会支援プロジェクト(PACOGES)」と連携して行われています。
ブルキナファソ東北部に位置するサヘル(「サハラ砂漠の端」の意)地方は,気候的,地理的,社会的,政治的な様々な危機に晒されており,2013年以降,マリ北部を占拠したイスラム過激派による戦禍から逃れたマリ難民がサヘル地方に流入してからは,脆弱性が深刻化しています(注)。このような理由から,サヘル地方は,ブルキナファソ国内の他の地方と比較し,開発分野において非常な遅れを取っており,2人に1人の子供は住居,栄養,衛生の問題に苦しみ,10人に5人の子供は保健サービスを得るために最低30分は歩かなければならず,通学している子供は就学年齢の子供の約半数であるのが現状です。
本支援は,サヘル地方の住民及び難民のためにUNICEF及びブルキナファソ政府が実施する人道的活動を支援するものであり,(1)太陽光電灯(一万個)の供与や教員の研修(対象者956名)を通じて脆弱な子供,特に女児の良質な教育へのアクセスを改善し,(2)栄養不良に苦しむ子供の栄養状態を改善し,(3)飲み水の備蓄を供給し,保健施設,小学校,コミュニティに衛生的なインフラを設備し,(4)子供を暴力,児童労働等から守るため家族及びコミュニティの強靱性を強化することを主な目的としています。
式典において,二石大使は,サヘル地方はもともと,栄養不良,飲み水や保健サービスへのアクセス,教育等の分野に苦しんでいたことに加え,2012年の食糧危機,マリ難民の流入以降は人道状況が更に悪化し,緊急的な人道支援が必須であることから,日本は本支援を決意した旨述べました。また,二石大使は,質の高い教育を受けた国民が国の一番の財産であるとの確信のもと,国の未来である子供たちを導き,知識を与え,国の大切な財産を作るという重要な役割を担う教員たちを奨励しました。さらに,二石大使は,本支援が,サヘル地方の住民が恐怖や絶望ではなく,自由や尊厳のもと生活することを可能にし,ブルキナファソの持続的な発展に貢献することを期待する旨述べました。
サマドゥ・クリバリ国民教育・識字大臣は,児童の権利条約に基づき建設された「子供に優しい良質の学校」は,児童の人権,公正,透明性等の尊重といった価値を確立させるものであると説明しました。また,クリバリ同大臣は,「子供に優しい良質の学校」の活動は,学校の建設により教育の機会を与えるだけでなく,教育パフォーマンス,教育プロセスの質を向上させ,子供のモチベーションを上げ,彼らの才能を全般的に開花させるものであると評価するとともに,日本の支援に対して感謝の意を示しました。
ジブリル・ラレ・サヘル地方知事からは,サヘル地方は教育分野において早期結婚,児童労働などの影響で大きな課題を抱えており,2012-13年の就学率は44.3%,合格率は60%以下と,ブルキナファソにおいても教育指標が最も遅れている地方であると説明がありました。また,ラレ同知事からは,本支援の開始後,同地方内の全学校における学校運営委員会の設置,能力強化の研修,教材キットの配給等が行われた旨報告がありました。さらに,ラレ同知事は,地方の教育のため活動しているパートナーに対して感謝の意を示すとともに,サヘル地方における子供の教育改善に向けて引き続き力を注いでいく旨決意を表明しました。
マルク・ルバンUNICEFブルキナファソ事務所長からは,本活動はJICAの技術協力プロジェクトPACOGESと連携して実施しているものであり,これまで,2万5千人もの児童が良質の教育を受け,151もの学校運営委員会が収入向上活動で裨益するなど,全ての目標は達成されている旨報告がありました。また,ルバン同事務所長は,ブルキナファソ政府に対して「基礎教育戦略的開発プログラム」の枠組みでの一貫した努力を評価するとともに,日本政府の支援に対して感謝の意を示しました。
(注)ブルキナファソ政府の発表によると,2015年6月時点,ブルキナファソ国内の難民キャンプで暮らすマリ難民の数は3万人を超えます。
【案件概要】
・事業名:平成26年度補正予算案件「サヘル地方及びマリとの国境地域における,保健・栄養,水・衛生,教育,子どもの保護への統合的援助を通じた家族,コミュニティー,組織の緊急準備対応力,強靱性の強化(UNICEF経由)」
・供与額:370万ドル
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式典中,スピーチをする二石大使 | 研修第一セッションを修了した教員と記念撮影。(写真後段左からルバンUNICEFブルキナファソ事務所長,クリバリ国民教育・識字大臣,ラレ・サヘル地方知事,二石大使) |
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日本,UNICEFのロゴがついた研修修了書 |
カチルガ村の小学校で児童に太陽光電灯を供与(写真左からルバンUNICEFブルキナファソ事務所長,クリバリ国民教育・識字大臣,ラレ・サヘル地方知事,二石大使) |