大使挨拶(令和5年)

令和5年1月4日
2022年は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が国際秩序を大きく揺るがしただけでなく、穀物、肥料や燃料価格の高騰をはじめ世界経済(そしてブルキナファソ)にも大きな影響をもたらしました。新型コロナウイルスなどの感染症や気候変動の脅威が身近に迫る中、その対策について国際社会で活発な議論が行われた年でもあります。サッカーワールドカップ・カタール大会では、大国を次々に撃破した日本の活躍とともに、アフリカ勢として初めてモロッコがベスト4に入ったことも、世界中の話題をさらいました。
 昨年年頭の御挨拶では、2022年はチュニジアでT I CA D8が行われる年であり、ブルキナファソも治安状況には困難が続くも、新たに策定された第二次国家経済社会開発計画の下、未来志向で前に進みたいと抱負を述べました。しかし、治安対策に成果の出ない前政権に対し、年初直後の1月末、さらには9月末と相次いで軍事政変が起きる不安定な1年となってしまいました。政変という非民主的な形での政権交代は国際法的には受け入れられないものであり、すでに約束された2024年7月までに民政移行を完了しなければなりません。そのためには、治安状況を改善し、現在180万人にも及ぶ国内避難民(I D P)や彼らを受け入れるホストコミュニティの人々に対する人道支援を強化する必要があります。日本は、治安の悪化で行動が制限される中でも、ブルキナファソ国民に寄り添い、状況やニーズに応じた支援を継続してきました。
 厳しい生活状況の中でも、ブルキナファソの人々は文化やスポーツ活動を継続しています。自立心や独立心、お互いへの敬意や連帯意識といった価値観を育み、社会的結束を醸成するためにも、文化・スポーツは重要な役割を果たします。日本は、柔道、空手といった武道や野球、サッカー、ラグビーの用具を供与したり、日本酒試飲会や書道、アニメ、マンガなどを通じた文化紹介、さらには日本の発展の歴史やデジタル化の現状を紹介するセミナーを開催して、交流を深めてきました。
 テロによる治安悪化は一朝一夕に解決できる問題ではありません。2023年は、引き続き在留邦人の皆様の安全確保を第一に考えつつ、ブルキナファソの人々が一刻も早くこの苦境から脱出し、実りある未来を展望でき、ひいては日本とブルキナファソの人々の友好関係が強化されるよう尽力してまいりたいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。
 
在ブルキナファソ日本国特命全権大使 加藤正明